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  • 2025.6.25  レポート 

シンガポールで開催された「InsurTech Connect Asia 2025」において、当社代表取締役社長 兼 CEO 柏岡が登壇しました

2025年6月3日〜5日に保険業界におけるイノベーションと変革のための世界最大のイベント「InsurTech Connect Asia 2025」がシンガポールで開催され、その中のセッション「Balancing Innovation and Oversight: Building Japan’s Next-Gen Insurance Ecosystem」に当社代表取締役社長 兼 CEO 柏岡が登壇しました。

  



アジア最大級のインシュアテック・カンファレンスとして、多くの保険業界のプロフェッショナルや世界的なスピーカーが参加。本イベントでは、最先端のInsurTechソリューションを体験できる協賛各社のブースも多数出展され、活気に満ちた雰囲気の中で、業界の未来をかたち作る議論が繰り広げられました。

この国際的な舞台に柏岡が登壇し、日本の保険業界が直面する構造的課題とそれを乗り越えるための戦略を、実体験と共にリアルに語りました。

目指すのは「生活導線に溶け込む保険」

登壇冒頭、柏岡はリードインクスの使命をこう語りました。

「私たちは保険会社とデジタルチャネルの“あいだ”に入り、生活者の保険体験を再設計する存在です。保険が“探して入るもの”から“出会って自然に入るもの”になる、その変化を支えるのが私たちの役割です。」

銀行アプリで数タップ、ECでの買い物中、旅の予約と一緒に──リードインクスが提供するのは、そんな日常の“ついで”に保険を加入できる組み込み型モデル。これまでに35以上の保険商品をローンチし、累計契約数は1,000万件を突破。ソフトバンクのグループのテクノロジー基盤と、LINE・Yahoo! JAPAN・PayPayなどのチャネルを掛け合わせ、保険の常識を根底から覆すエコシステムを築いています。

保険の未来は、AIの中にある──「効率化」の先に見据えるもの

セッションの中で注目を集めたのは、生成AIの活用事例でした。

「保険金請求のプロセス全体をAI-OCRで自動化し、わずか5分で保険金が着金する体験を構築しました。これにより、25万件を超える契約を少人数で処理することに成功しています。」

AIの活用は単なる業務効率化にとどまりません。その真価を発揮するのは、「誰に、どんな保険を、どう届けるか」というパーソナライズ領域。保険業界のデータ構造は複雑で、商品開発・販売・請求・再保険までが精緻にバランスして成り立っています。ある領域だけを最適化すれば良い、という単純な話ではありません。

特に販売チャネルでは「顧客データの主権」が障壁となり、銀行や小売との連携においてAIを活かすには、データの流通設計から見直す必要があると語りました。

「海外ではすでに生成AIを活用したテレセールスで営業効率を高める取り組みが始まっています。日本でも、倫理と成果のバランスを取った活用が早急に求められています。」

AI活用が突きつける“保険業界の構造的ジレンマ”

続いて、生成AIを保険業務の高度化にどう活かしていくか、そして「社内業務の効率化」にとどまらない、対顧客向けの展開についても議論が交わされました。

柏岡は、データや事例の活用が中核となる業界では、法律業界や製薬業界のようにAIの適用が先行している一方で、保険業界には特有の難しさがあると指摘します。

「保険事業は、商品企画・開発から引受(アンダーライティング)、販売・募集、契約管理・保全、保険金請求・支払い、再保険・リスク管理、資産運用・財務管理に至るまで、あらゆるプロセスが絶妙なバランスで成り立っています。そのうちどこか一領域だけを過度に最適化すると、他領域に歪みが生じ、結果として収益性を損なう恐れがあるのです。」

この構造的な複雑さこそが、保険業界におけるDX推進の難所であり、AIを導入する際の設計思想において「全体最適」が欠かせないという警鐘でもあります。

「単なる業務効率化ではなく、“どの業務を、どの順番で、どう変えるか”を経営レベルで判断する。そのためのデータ設計と技術理解、そして業界特性に対する深いインサイトが必要です。」

インシュアテックは技術革新であると同時に、構造改革でもある。リードインクスはこの複雑な業界構造の中で、次なる変革の起点となるべく挑戦を続けています。





最後に──“アジアの変化を、日本でも”

アジアでの経験を振り返りながら、未来への想いをこう締めくくりました。

「東南アジアにおいて、たったの1年で大きな変化があった。実際にその社会の変化のスピード感を肌で感じた今、日本もそのような変化の只中にあるべきだと信じています。そのなかで私たちもその一翼を担えるよう、歩みを止めず進みつづけます。」

保険業界のデジタル化は、単なるIT導入ではありません。それは、人々の生活と安心のあり方を、ゼロから見直す営みです。

リードインクスは、これからもそのフロントラインで、「あたらしい保険の常識」をつくり続けます。

参加メンバーの視点から見た、InsurTech Connect Asia 2025

今回の柏岡の登壇を含め、リードインクスとしても大変意義のある国際インシュアテック・イベントとなった「InsurTech Connect Asia 2025」。講演以外にも、多様なセッションやブース出展、業界のリーダーたちとのネットワーキングの場を通じて、多くの学びと刺激を得る機会となりました。

ここでは、現地に参加したリードインクスのCMO 兼 カスタマーサクセス本部 本部長 王と事業開発2部 部長 佐藤からのコメントを紹介します。

王:
毎年ITC Asiaに参加できることを光栄に思います。東南アジアをはじめとする各国のインシュアテック企業、保険会社、および保険事業に関わるプラットフォームの発展の速さには毎年驚かされます。
今年は特に、Monee様やLAZADA様などのECサイトで保険販売へのシームレスな導線の構築や自動車保険や医療保険における保険料が適切に徴収されている仕組みを興味深く拝見しました。今後、消費者目線でのデジタル化やAI導入が進むにつれて、日本の保険業界にも新たな変化が訪れる兆しを強く感じました。

佐藤:
ITC Asiaに参加し、各国のインシュアテック企業の先進的な取り組みに触れることができました。
顧客のライフスタイルや価値観に合わせた販売・マーケティングの重要性といった業界課題は日本国内と共通していますが、プラットフォームやAIの活用により、多様なアプローチが実現されている点を深く理解できました。
各企業のトップの方々から直接お話を伺うことができ、大変刺激を受けました。今後は、これらの知見を日本国内でどのように実現していくか、検討を進めていきたいと考えています。